生態について


 アサギマダラは他の蝶に比べて生態の解明されていない部分が多い謎に包まれた蝶でもあります。特に渡りに関してはいつ、どの方向に、どれくらいの距離を移動するかということがマーキング調査で分かってきたくらいで、その他のことはほとんど分かっていません。
何がきっかけで渡りをはじめるのか、渡りをしない個体もあるのか、春に北上する個体と秋に南下する個体はどうやって方向が分かるのかなど今後のマーキング調査で次第に解明されていくと思いますが、このページでは現在分かっている生態について紹介したいと思います。
形態別の生態
 産卵〜卵 食草や吸蜜植物
 孵化〜幼虫 成虫の行動
 蛹化〜蛹 天 敵
 羽化〜成虫
特徴的な生態
1、決まった越冬態がない
 日本の蝶のほとんどの種類は越冬形態が決まっています。たとえばアゲハやモンシロチョウは蛹で、キチョウやアカタテハは成虫で、国蝶であるオオムラサキなどは幼虫で、ミドリシジミは卵で越冬します。ところがアサギマダラには決まった形態がありません。
 四国などでは主に2〜3齢幼虫で越冬することが多いようですが、南西諸島では卵、幼虫、蛹、成虫とどれも見られます。これは生まれ故郷が季節のはっきりしない熱帯であることに関係しているのかもしれません。
2、成虫の寿命が長い
 成虫で越冬するものはそれなりに寿命が長いのは当然ですが、アサギマダラの場合は四季を通じて長い期間を成虫で過ごします。過去のマーキング調査では4ヵ月後に再捕獲された例もあります。捕獲するまでの期間が入っていないので、おそらく4〜5ヵ月は生きているのではないかと思われます。
3、体内に毒のある成分を持っている
 アサギマダラの幼虫はキジョランやイケマなどガガイモ科の植物を食べます。これらのガガイモ科の植物には有毒なアルカロイド成分が含まれており、幼虫の時に体内に蓄積したこの物質は成虫になっても保持されます。そのため鳥の餌食になることはほとんどありません。
4、羽化してもすぐには交尾しない
 多くの蝶は羽化したときにはすでに性的に成熟していて、すぐに交尾することが出来ます。ですから屋外で採集したメスの成虫はほとんどの場合卵を持っています。
ところがアサギマダラは成熟に時間がかかるので、羽化してもすぐに交尾することはありません。
 オスはメスを誘うフェロモンの生成に必要なPA(ピロリジディンアルカロイド)をヒヨドリバナなどで吸蜜して摂取する必要があります。そのためオスもフェロモンが十分蓄積できるまでは交尾行動に入れないのです。このような昆虫として、マツの大害虫とされているマツノマダラカミキリも羽化後1月程度マツの新梢部を摂食しないと卵巣、精巣の発達せず交尾行動に入れないことが知られています。

 マーキングをしてみるとやけにオスが多いという印象を受けますが、ヒヨドリバナなどに群がる大部分はオスで、メスは特に吸蜜植物を選ぶ必要がないため、別の花や林内で吸蜜していることが多いためだと思われます。実際の雌雄の性比はほぼ1:1だそうです。

参考文献
旅をする蝶 アサギマダラ 宮武頼夫・福田晴夫・金沢至 著 むし社
アサギマダラ 海を渡る蝶の謎 佐藤英治 山と渓谷社